platkisのブログ

生きていく勇気はないけど死ぬ勇気もない

太宰治を読んだ 読書録1

 正直ここまで丁寧な描写で文字を書く人だとは思っていなかった。

 ざっくりとしたあらすじとか読んだ直後に思ったこととかを書く。書評みたいにだらだら書くつもりはない。 もともと国語が苦手で活字もそこまで読まなかったやつが読書感想で原稿何枚にもわたる長い文章なんて書けるわけがない。 人に作品を勧めるときに「なんかおもしろい」と言っても魅力が伝わらないのでどこがどう面白かったのかということを言語化する練習として書いているだけ。 後から読んだら違う感想やとらえ方をするかもしれないのでそれを振り替えられるようにするのと,ファーストインプレッションでどこが印象的だったか記録しておくためのもの。 ここに書いた作品の評価はあくまでも自分が1回目に読んだ直後に思ったことで完全に個人の勝手な見解であり,作品のとらえ方は人によって大きく異なるのであくまでもコイツはこう思ったとだけ理解していただければと思います。

斜陽

 本を読もうと思って一番最初に読んだ本。青空文庫でタダで読める

 題目どおり貴族の主人公一家がだんだん斜陽化していく話である。 最初こそ貴族の高貴な振る舞いがわかる描写があるものの次第にそれらはなくなり,いくつかの大きな出来事を経て最終的に貴族とは程遠い泥臭いような賤しいようなただれた生活の描写がなされる。 よりどころとおもっていたものはあるところでは主人公たちにとって枷となっていたこと。そしてその枷によって繋ぎ止められていた力が次第に弱くなるにつれ自分たちが望む姿になろうと行動し,苦しみ悶える姿を描いた作品。

 全体として少しずつ生活に鮮やかさを失っていく描写が死ぬまで,死してなお貴族としての気高さを保ったお母さまの描写と相まって非常に鮮明だった。物語中の伏線とその回収の流れがわかりやすく読みやすかった。伏線だと認識できずにいる伏線や認識できていなメタファーがまだ沢山あるとは思うが…  本にかぎらず退廃,破滅,誰も幸せにならないディストピア的な話が好きだなと活字媒体以外の作品を鑑賞しながら薄々気づいてはいたが,それらがもつ臨場感のある悲しみ苦しみ無力感の表現や破滅がもたらす最後の輝きの飾らない美しさに強く惹かれるからかもしれない。

 また読みたいと思った。面白かった。 太宰治ってこんなに面白いの書くんだ…と衝撃を受けた。久々の読書で比較対象がないとはいえこの後ある程度本を読んだ状態で印象に残った本は?と聞かれたときにその中の1つに入れられるくらいには印象的だった。

面白さ7/10

読みやすさ7/10

衝撃度 9/10

心を動かされた度 9/10

道化の華

 斜陽の次に読んだ。 旧字旧かな遣いが青空文庫にある

 主人公の葉蔵が女と心中をして,主人公は助かり,女は死んでしまう。その後病室での人々とのやり取りが描写されている。ところどころに筆者目線の語りが入るのは少し面白かった。

 最悪なことに,もっと人間臭い人物の動きや描写を期待していた。というのも最初に読んだ斜陽の衝撃が大きすぎた。期待しすぎてしまった。 心中に失敗して警察に取り調べを受けたり,病室で関わる人との関わり合いがあったりするだけだった。 他には,なぜ心中に至ったかなどは作中でその議論がなされているがそれだけという感じだった。主人公の行動言動に心を動かされることがなく,主人公の身に降りかかる出来事などが常識的なもので,主人公が最後まで普通に生きていることが気に食わないとまではいかないものの引っかかった。  たぶん最初の心中の段階で「退廃,破滅,誰も幸せにならないディストピア的な話」を期待したがそういう話ではなかったので勝手に期待して勝手に幻滅しているだけだと思う。 途中で作者目線の語りを入れるという新しい表現技法のデモンストレーションの作品と思っておくことにした。

面白さ 2/10

読みやすさ 4/10(旧字旧かなで読んだからの可能性大)

衝撃度 3/10

心を動かされた度 1/10

パンドラの匣

 道化の華はたまたまボクの感性にあわなかっただけだ。そう思いたい一心で読んだ。 青空文庫で無料で読める

 喀血で療養することになって入った療養所での主人公とその周りの人間との関わりを描いた作品。助手と療養者との間に芽生える好意に素直になれずきまりの悪い言動をして後悔したり,好意とも受け取れる言動に当惑したりしながら主人公が精神的に成熟していく様を描写している。

 自分が特定の助手に好意をもっていることになかなか素直になれず思ってもない行動や発言をしたり,助手の思わせぶりな行動に当惑したりする描写,主人公とその同室にいる人物の生き生きとした描写といった表現は前に読んだ2作品同様に素晴らしかった。

 「パンドラの匣」という作品は退廃,破滅,ディストピア的な話ではない点でいえば道化の華と同じではあるが,主人公の結末や話の展開が退屈といったことは感じなかった。好意に惑わされる主人公が悶える表現は読者にむずがゆさと与え続けるほどに臨場感にあふれていたからであった。ただ,文章の長さの割には主人公の童貞メンタルという根幹は対して変わらない為,同じような描写を手を変え品を変え書いていて新鮮さがない,じれったい,もどかしいと感じてしまっていたら「道化の華」のように面白いとは感じなかったのかもしれない。 ただ,個人的にはわりと面白いと思う。

面白さ 6/10

読みやすさ 8/10

衝撃度 3/10

心動かされた度 3/10

短期間で太宰治作品を読み込んだせいで目新しさを感じられず下2つの項目の評価があまり高くないので時間をおいてまた読むことにしたい。

思ったこと

 太宰治の作品の表現,細かい!鮮やか!まるで目の前で起きているかのよう!ということをただ繰り返し言うだけの感想文となってしまった。

 1人の作家の出した作品の中でもめちゃくちゃ刺さる作品とnot for meな作品があったので,過去に受けた国語の授業で苦い思い出のある作品を執筆している作者のほかの作品にも手を伸ばそうと思う。(特に宮沢賢治とか)

20230924